遺伝子が解読され、宇宙の始まりが明らかになり、「生命」の概念までも変わりつつある時代・・それが現在です。
38億年生命進化の最先端を生きる私たちは今また更なる壮大な根本変動のまっただ中に在ります。
人間とはなにか。普遍とはなにか。
戦後日本に生まれ、生物として自由で開放的な時代の空気を記憶する昭和のこどもたちがここから人類の永遠の願いを発信します。
奇しくも昭和天皇が崩御され、年号が平成に変わったその年「昭和のこどもたち」人形制作に着手しました。
当時 幼い我が子を取り巻く環境は、自分の子供の頃とは隔世の感がありました。
この数百年を一気に縮めたような根本変動を言葉で言っても伝わらないもどかしさを、
人形で「お父さん、お母さんの子供の頃はね。」と一目瞭然のものとして伝えたかったのです。
そうしていつの間にか、この世にはいない人たちをモデルにたくさんの人形が生まれました。
その豊かな表情は作者のわたしを飛び越えて、見る人たちのそれぞれの想いに語りかけます。
親から子に伝えたい想いはいつしか 「人間とはなにか。普遍とはなにか。」という素朴な問いに変わりました。
科学技術が進歩し、命の誕生の概念さえ変えてロボットが人間の未来さえも掌握する勢いで進化しています。
無機的な世界に生まれて来る次の人たちに、人間の内面の強さ豊かさを伝えるのがこの仕事の使命と考えるようになりました。人形は木質(桐塑)で、表面を天然の膠や岩絵の具などで仕上げているため、永い耐久性をを持ちます。
2016年現在、昭和のこどもたち人形は第1部【ふるさと】第2部【海の人】、64タイトル、全332体で構成されるスケールの大きな世界に成長し、この度完成しました。
石井美千子